エイリアン・コヴェナントと「カーストシャッフル」
エイリアンコヴェナントを観てきました。
ここ10年で最高にアレな映画でした。
というのも、私が事前に手に入れていた評価と寸分違わぬ出来だったから。
監督はかのリドスコこと、リドリースコットその人。
男の子のSF的ツボを刺激することに関して、ある意味では彼の右に出る者はいまのところ思い当たらない(マイケル・ベイ監督とかか?)
彼は患者を使って秘孔を突く練習をする。
間違えられた患者は、まず間違いなく死ぬ。
今回の映画は、まさにそんなハリウッドのアミバ様が秘孔を突きまくって完成させた映画と言っても過言ではないだろう。
積極的ネタバレの時間だ〜!
簡単にこの映画の紹介をしてみよう。
(ストーリーはウィキでも見てくださいな)
前作「プロメテウス」の正当な続編であり、後の「エイリアン1」に続く位置付けとなっているこの作品。
宇宙を旅する植民船「コヴェナント」は目的地の手前で怪電波をキャッチ。
副長が反対する中、「なんか良さそう」という船長の独断だけでその星に進路変更。
そこはプロメテウスのラストで、半ば自暴自棄になった博士と半壊のアンドロイドが目指した星。プロメテウスに出てきたあの異星人の文明が栄える母星なのであった。
その母星を博士とアンドロイドが目指したのは、単なる「仕返し」が目的だったはずです(確か……)。
星に到着する前に、自我を獲得したアンドロイドに博士は殺されてしまいましたが、アンドロイドは目的を果たす。
「仕返し」
エイリアンを創造した彼ら異星人の星に、「エイリアンの素」ともいうべきウィルス満載のアンプルをばらまいたのだ。
そう、コヴェナント船が進路変更してまで目指した星は、すでにエイリアンの巣窟になっている星だったのだ!(驚愕)
もちろんコヴェナント船にもアンドロイドがいる。
目的地到着まで、人間のクルーは全員コールドスリープしているからだ。
何かあったときだけ、人間は強制的に覚醒させられる。
寿命はどうやら「無い」らしい。
(コヴェナント船においては、もうアンドロイドの方が人間のクルーより重要で必要不可欠なのは分かりますね)
映画の冒頭、船は突然の超新星フレアに晒され、太陽光パネルの一部を破損してしまう。
起こされる人間のクルーたち。
(人間のクルーはまったくと言っていいほど信用されていない。船外活動なんぞ、アンドロイドにやらせておけばよいものを……)
無秩序で無知なクルーばかりだというのは、彼らの身なり、言葉遣いから一目瞭然。
彼らは私たちが思い描いているような「宇宙飛行士」コスモノーツといった英雄などではなく、単なる労働者に過ぎないのだ。
初上陸した地球型惑星で、なんのためらいもヘルメットもマスクも無く、上陸してしまうような人たちなのだ。空気があっても、安全かどうか分かりはしないのに。
(「そりゃエイリアンに食われるわな」という予感がこの時点ですでにビシビシと伝わってきます)
怪電波を目指し、行軍を開始する一行。
何でもっと電波発信源に近いところに降りなかったのか。
エイリアンウィルスは、霧のように空気と混ざり、鼻や耳から人間の体内に侵入。
あとはお馴染みの「腹ドーン」が起こる。
(お腹を食い破っていくエイリアンベビーのことを、ここではそう呼びます)
あとは抱腹絶倒。
愚か者クルーによる、極限の喜劇の開幕です。
最初に腹ドーンを起こした男性を運び込んだ女性クルー。
二人は小型船の医療ルームに閉じ込められる。
「開けてくれ!」
と懇願するも、小型船に残っていたパイロットは開けない。
絶対に開けない。
開けたら死だ(映画的に、どう考えても)。
パイロットは銃を取りに昇降口に走る。
部屋の中の女性クルーは血で滑って転ぶ。(一回目)
そして壁際へ。
部屋には死体と自分とエイリアンベビーしかいないのだ。
彼女はナイフを構える。
だが、ナイフごときではどうにもならないのであった…………。
一方、半ば半狂乱状態になったパイロット(女性)は連絡を終え、再度、様子を見に来ていた。
食われる女性クルー。
扉を開けてしまうパイロット。
銃を乱射するが、銃が当たらない。
血で滑って転ぶ。(二回目)
命からがら部屋から出て扉を締めるが、エイリアンベビーにとって、そんなものは無いも同義だった。
走り、二丁目の銃に向かうパイロット。階段から転げ落ちる。(三回目)
どうにか銃を手にしたパイロットだったが、エイリアンベビーはすぐそこ。
所構わず銃を乱射して、小型船を穴だらけにしてしまう。
結果、リドスコ節炸裂の大爆発。
まるで風雲たけし城の火薬量。
派手であることが一種の様式美であると断言するような、そんな爆発が起こる。
(ここまでで、この映画がどんな結末になるかを物語っている)
ギーガーも真っ青。
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一方、怪電波捜索隊は、プロメテウス号を発見。
中では博士の写真、記録映像などを見つけるが、小型船からSOSが入り、帰ることに。
だが時既に遅し。
小型船の爆発を目の当たりにしてしまう一行。
もう一人の腹ドーンエイリアンに襲われ、銃撃戦になる。
私の見間違いで無ければ、ここでフレンドリーファイヤーがあったように思う。
(スターシップトルーパーズ再び!)
アンドロイドも腕を食われるし、エイリアンに銃は効かないことが分かる。
万事休す。
だがそのとき、まばゆい光が辺りを包む。
謎の人物が助けに来たのだった。
それは、プロメテウス号のアンドロイド、デヴィッドだった。
半壊状態だった彼は博士によって再生されていた。
デヴィッドに導かれるまま、クルーはある場所に誘導される。
デヴィッドがひっそりと暮らしている場所。神殿。
そこは何か、古代の儀式が執り行われたかのような広場。
だが広場には、生きたまま焼かれたかのような、黒焦げの死体が何千何万と手つかずのまま放置されていた。
端的に言うと、神殿の中で彼はエイリアンの研究を続けていた。
ここではデヴィッドとコヴェナントのアンドロイドの交流が描かれますが、ホモホモし過ぎているため割愛。
自我と創造主への憧れ、つまりエイリアンへの愛が描かれる。
案の定、デヴィッドに欺され、クルーはフェイスハガーの餌食になってしまう。
(おお、これぞエイリアン!)
デヴィッドと対決するアンドロイド(名前は忘れた)。
母船から小型船が助けに来るが、やっぱりエイリアンも滑り込み乗車。
船体に装備されたクレーンで握り潰すが、母船に帰ったあとも、容赦は無い。
実はどういう訳か、もう一匹紛れ込んでいた。
(多分、三人目の腹ボーンだと思われる)
少しだけエイリアン2を思わせるような船内描写に嬉しくなったのもつかの間、残る二人のクルーは作戦通り、テラフォーミングベイにエイリアン(成虫)を誘い出すことに成功。
アンドロイドが良い仕事をする。
いとも簡単に月面ビークルみたいな車に閉じ込め、そのまま宇宙空間に放出。
めでたしめでたし。
と思ったのも束の間、コールドスリープカプセルに入ったところ、アンドロイドがデヴィッドだということに気が付く。
顔が同じなので、ぱっと見では気付かなかったのだろう。
左腕も自ら切り落とし、偽装は完璧だった。
そう、時既に遅し。(何回目だこれ)
最後のクルー(主人公)は強制睡眠に入り、デヴィッドは胃に入れていたエイリアンの卵を、人間の胚が眠るキャビネットに仕舞う。
デヴィッドが、新たな種族(エイリアン)の創造主となるために…………。
カーストシャッフル
んで、デヴィッドがプロメテウス号からエイリアンウィルスをばらまくところが、私としてはこの映画の最も美しいシーンだと思ったのですが、 どうでしょう。
トランプ政権が誕生したのも、ある一定層の人々が何かしらの変化を求めてのことだったのではないかと思いますが、その変化とはつまり『混乱』ということになるのではないか、と。
もちろん良い方向へ少しずつ変わっていくことを願っているのは、どこの人も同じでしょう。
しかし大多数が参加する多数決方式で、しかも選択肢は二つ、という状況では変わってくるのではないか。
非常に勿体ないことではありますが、より「面白い方へ」賭ける、という選択をする人もいる。
それも、無視できない数の人が同じ選択を行ったとしたら。
『混乱』よる偶発的な変化。
まるで、宝くじを買うような行為だ。
急に大統領選の話をして申し訳ないですが、まさにそんな民衆(私を含む)の願望を絵に描いたようなシーンが、あのウィルステロのシーンだったわけです。
少なからず、私はあのシーンに映画的快感を感じました。
前作プロメテウスを見ていない人にとっては「なんのこっちゃ」なシーンではありますが、エイリアンを製造した憎き異星人を皆殺しにする。
前作の主人公、博士を苦しめ続けたあの異星人を惑星丸ごと破壊し尽くす。
こんなSF的なネガティブスケール感に満ちた作品はここ10年でパッと思いつかない。
そして、エイリアンの研究を続けていたデヴィッドもまた、異星人と同じ道へ進んでいく。
それは新たな生命の創造主とも言えなくはないのだが、デヴィッド自身もまた非生命体というのも、ちょっとした皮肉があっていいと思います。
(エイリアン1に続いていく、というところも)
ただね、もっともっとグロ描写を詰め込んだアクション映画のエイリアンを私は観たいのよ......……。