夏の読書感想文「キッドのもと」浅草キッド
浅草キッドの本を読んだ。
どうしてこの本の感想を書こうと思ったのか。
それは、忘れかけていたハングリー精神を思い出したから。
中学のころ、授業中は主に「中島らも」の文庫をこそこそと読みふけっていた。
世の中にはなんて悪い大人がいるんだろう。
そしてそれはなんて素晴らしい生き方なんだろう。
それが私の感想だった。
同級生、先輩たちは身体の変化に呼応するように「悪いこと」に染まる。
変化に戸惑うのが思春期の精神状況なら、私の精神は見知らぬ本の世界に心酔していた。
浅草キッドにも、そんな時期があった。
いや、誰しもそんな悶々としたエネルギーの捌け口を見つけられない若者だったのだ。
彼らは「ビートたけし」その人を目指し、少しでも近付こうとする。
通常の暮らしからは想像も出来ないような環境で過ごす20代。
わずかな睡眠時間で、生活の全てを仕事に費やす。
もちろん、運もある。
しかし、生き方のスケールが違う。
ここまでやらなければ芸人として大成しないのか?
ならば私はどの程度、努力できているだろう?
そんじょそこらの芸人とは違う。
語彙力? 発想力? 費やしてきた時間?
漫才師としての密度、とでも言おうか。
ビートたけしに憧れ、ビートたけしを目指した二人の人生が、ここにある。
久しぶりに毛色の違う本を読んでみたが、これは大当たりだった。
喋りに特化された人間の書く文章は、やはり面白い。